女王様の図書室


2005年6月に読んだ本     

梅雨になって外に出られないと本もすすむ?
5月から読みかけのものもあったりしたのですが
6月は結構読めました。エッセイなどもおりまぜ
まぁまぁかなぁという感じ。
できれば、一冊どーんと響くのがあると良かったけど、
わりとどれもそこそこと言う感じですね。


デューク       江國香織 6.7カラット
 前に一度読んだのだけど、山本容子のさしえ付きの素敵な本だったので、図書館で借りてみた。これが図書館の良いところ。一度読んだ本でも、読んだ気もするけど覚えていない本でも、はずすかもしれない初めての作家でも、安心して読める。何しろタダだから。
 愛犬「デューク」(プーリー)を失った女の子が「ビョービョー泣く」シーンから始まるのが印象的なストーリーだ。最初の、デュークがいなくなった、というくだりはちょっと泣ける。少年とのやさしい出会いもしみじみとして素敵だ。
 こんな風に癒されれば救われるのに、と思う。ビョービョー泣いた後で、立ち直れるならいいのに。それは、小説だし、主人公が若い女の子だからかもしれない。若いコは心の新陳代謝も盛んだ。
 心が安らぐすてきな物語だけど、現実にはこんな風には立ち直れないのだ。決して。「こんな風に立ち直れたらいいのに」という願いを込めて江國香織が書いたのかな?彼女もアメコッカの「雨ちゃん」を飼っているらしいから。

ハワイッサー   水野スミレ 5.6カラット
 「専業主婦小説」というキャッチコピーに思わず手にとった。おお!新しいじゃないか。
 35歳の専業主婦コトブキは、12歳年上の大学教授の夫、二人の子供とともに沖縄でマンション暮らし。「お気楽専業主婦なら私と同じじゃん」と思いきや、コトブキのパワフルぶりにはとてもかなわない。PTAの仕事から、家事、2人の男性との浮気、などなど全てをエネルギッシュにこなすのだ。分刻みのスケジュールで。まぁ、良く考えると私は違うけど、忙しい主婦の生活はみんなこんなモンかもしれない。(浮気はともかく)。だけどその当たり前のようで結構ドラマチックな専業主婦の日常を、ワクワクさせる文章で綴っているのはなかなかの文章力。
 最後に「オチ」を期待したんだけど、それは無かった。どうも全てに「オチ」を求めてしまうのは最近の私の悪い癖。水野スミレ、この後出してないようだけどもったいないな。もっと書いてくれ、専業主婦小説。

人生ぴろぴろ  さとなお 6.2カラット
 あの「うまひゃひゃさぬきうどん」のさとなおのエッセイ。(「あの」って何だそりゃ)さとなおは某最大手広告代理店のクリエーター。95年に個人サイトを立ち上げてから、ネットでの活動をきっかけに出版や連載の活動がさかんになった。とにかく文章が面白く、とっても食いしん坊。「うまひゃひゃ」を読んで我が家は高松まで讃岐うどんを食べに飛行機で飛びました。「胃袋で感じた沖縄」もばっちり参考に沖縄をまわりました。
 今回の「人生ぴろぴろ」はサラリーマンの日常(といっても普通のサラリーマンとは大分違うけど)をエッセイにしたもの。彼は阪神淡路大震災をモロに体験しているのでその話もかなり興味深い。変に悲壮に書いてないのが返って生々しい。地震対策の参考になります。やっぱ家具は固定しないとやばそうです。29インチのテレビがぶっとんだそうで・・・。
 ちなみに、ご本人とはお会いした事があるんです。HPの読者だった王様がキリプレをゲットしたんですね(頑張って)。キリプレは赤ワインだったんですが、是非一度お会いしたいと思っていた王様が「せっかくなのでお会いして」って事で築地の美味しい居酒屋で夕食を一緒に頂きました。はじけた文章よりずっと、穏やかな感じの方でした。その時解ったのですが、彼は当時私が勤めていた某お菓子メーカーの社長の甥でした。世間は狭い。会社のエレベーターで社長に「甥のさとなおさんと会いました。本も読ませて頂いて」といったら「あいつはまだそんなことをしてるのか」ってなことを言ってました。そんなことって凄い事じゃん。社長ったら。

妊娠カレンダー  小川洋子 6.9カラット
 小川洋子の芥川受賞作。他に2編が入った文庫でした。
表題作は、妊娠した姉とその妹の心の揺れと、ひっそりした憂鬱が描かれています。アマゾンの「出版社からの内容紹介」には「やがて妹はめまいのするような悪意のなかにすべりこんで行く」 なんて書かれていたけれど、それほどおどろおどろしいモンでもない。悪意と呼ぶのもどうかとおもうようなものである。そしてまた、そのゆるゆるとした憂鬱と戸惑い歪みを小川洋子がなんと上手く表現している事か。
 ちなみに、作品に良く犬が登場する小川洋子だけど、今回は「夕暮れの給食室と雨のプール」で、主人公の女性が「ジュジュ」という犬と引越しをしてきます。「ふるい家だけど、ジュジュと一緒に住めるのが何より」というような表現があって、「そうそう、アポロと一緒に住めるのが何より」と一人つぶやいてました。
 ちなみに、芥川賞受賞なのだから、小川洋子は純文学作家なのでしょうけど、「純文学」と「大衆小説」ってどう分けるんだか・・・。江國香織は直木賞だから大衆小説?うーんわからん。ま、ジャンル分けなんか意味をなさないけどね。

ハートビート   小路幸也 7.0カラット
 医者になるために渡米し、10年間行方不明だった主人公が帰国する。10年前の同級生の女の子「ヤオ」との約束を果たすために。そして生まれる謎を友人巡矢と共に解いていく。主人公はアメリカで行方不明だった10年間に悲しい過去を背負っている。それを少しずつ語りながらの謎解きだ。
 一方、小学5年生の「ユーリ」の家ではお化け騒動が持ち上がっている。この二つの事件が上手く絡み合って謎解きがすすんでいく。
 「どこでどうやって二つの事件がつながるのかなー」というワクワク感もあり、主人公の辛い過去の物語では胸が締め付けられる、そして最後の「えーっ、そう来たか」っていうか「それはないだろう」みたいなエンディングと、かなり盛りだくさん。最後の結末を「面白い」と思うか「ふざけんな」と思うかは人それぞれだけど、退屈しないことは保証します。

シーセッド・ヒーセッド 柴田よしき 6.8カラット
 新宿2丁目にある保育園の園長、ハナちゃんこと花咲慎一郎シリーズ第3弾。
ハナちゃんは園長の傍らで苦しい保育園の経営を支えるため(?)に探偵もやっている。ハナちゃんが何とも憎めないキャラで、思わず母性本能をくすぐられる女性も多いに違いない。
 今回の事件は、人気アイドルのストーカー、やくざの家の前に置き去りにされた赤ちゃんの母親探し、ノーベル賞候補の学者に頼まれた尾行の仕事、などなど。事件としては大きくはないけれど、なかなか良く出来たネタの数々。
ハナちゃんとやくざ山内練とのやり取りも面白い。
最後にちょっとほろりとさせるあたりもいい感じだ。
ただ、私としては柴田よしきは女性が主人公の濃い感じのが好きなので、このシリーズは「まぁ、たまには酢の物もいいけど、やっぱり基本は肉よね」って印象なのだ。これはホント人それぞれだと思うけどね。

神の子どもたちはみな踊る 村上春樹 6.2カラット
久しぶりの村上春樹。図書館で見かけて手にとってみた。
阪神淡路大震災を背景にかかれた6編の短編。直接的な震災の表現は無いが、登場人物はなんらかの形で震災にかかわっている。
でも、ひどい悲壮感や絶望感はない。みな、静かに現実を受け止めている。そして静かに傷ついている。
私は中では「かえるくん、東京を救う」が好きだった。唐突で、意味不明な、でもちょっとしんみり、ほのぼの、ホロリとさせるかえる君の登場がが何だか村上春樹らしい。きっと、今日も別のかえる君が東京を救っているのだ。

クレオパトラの夢 恩田陸 6.6カラット
「MAZE」に登場した神原恵弥が主人公。彼は美しい容姿で女言葉を使うという変なキャラ。不倫相手を追って北海道に行ってしまった双子の妹の和美を連れ戻すため、H市にやってくる。北の町で起こった和美の不倫相手の死と彼が握っていた謎。それを追う人々。「クレオパトラの夢」とはいったい何なのか?
主人公のキャラの好き嫌いが結構分かれるところだと思う。かっこよくて、面白くはあるが、ちょっと漫画チックな印象も否めない。キャラのインパクトとは裏腹に、ストーリーは結構静かで地味メかも。雪国のイメージがストーリーと重なっていい感じをかもし出してはいる。
が、実はこの作品これを書いているのは9月なのだが、読んでから3ヶ月たったらタイトルを見ても内容を即座には思い出せなかったのだ。それってもしかして印象が薄い作品って事?


                                

7月

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